七年に一度のご盛儀 善光寺の御開帳~特別なご利益にあやかりたい

「遠くとも一度は参れ善光寺」と江戸時代から伝えられる善光寺。信州を代表する名刹で、源頼朝や武田信玄、徳川家康など権力者からの信仰も厚く、江戸時代には庶民も参詣に訪れました。七年に一度行われる前立本尊の御開帳。本来であれば昨年開催される予定でしたが、新型コロナウィルス感染症の影響で一年延期にとなり、今年開催(4月3日~6月29日)となりました。御開帳でしか体験できない華やぐ善光寺をお参りしたく、長野を訪問してきました。

◆約1400年の歴史を刻む善光寺

ご本尊の一光三尊(いっこうさんぞん)阿弥陀如来は、欽明13(532)年にインドから百済に渡り、日本に伝えられた日本最古の仏像と言われています。仏教という新しい宗教を受け入れるか否かという論争の中、廃仏派の物部氏により難波の堀江へ捨てられた仏像。本田善光(よしみつ)が信州にお連れし、皇極元(642)年に現在の地にご遷座。皇極3(644)年に伽藍が造営され、本田善光の名をとり、善光寺という名になりました。


「牛に引かれて善光寺参り」

善光寺は日本に宗派が生まれる前から開山していたため、特定の宗派に属しておらず、女人禁制の寺社が多かった時代から女性に門戸を開いていました。宗派を問わず誰でも受け入れてくれる懐の深いお寺さんなのですね。

◆いざ境内へ!仁王門から見どころ満載


仁王像の配置に注目

2度の焼失を経て大正7(1918)年に再建されました。門の左右には彫刻家・高村光雲とその弟子米原雲海作の仁王像が立っています。よく見ると阿形と吽形の配置が通常とは逆。冬至の日に物事の始まりを表す阿形に朝日が、物事の終わりを意味する吽形に夕日が当たるように配置したと言われています。裏側にも同じく高村・米原作の三宝荒神像(竈の神)と三面大黒天像(大黒天・毘沙門天・弁財天)が安置されていますので、お見逃しなく。

仁王門から山門へ続く参道には仲見世がずら~り。美味しそうなお店が並んでいて気になりますが、立ち寄るのは参拝をしてからにします。

◆楼上から絶景が楽しめる山門

寛永3(1750)年建立。山門には登ることができ、2階には文殊菩薩騎師像が安置され、「智慧の門」として受験生に人気なのだとか。楼上からは参道側、本堂側両方の景色が楽しめます。特に本堂の写真を撮るには全体をきれいに撮ることができ、絶好の写真スポットです。ややっ!さすが御開帳。行列ができて、すごい人出です。

山門には「善光寺」の扁額が掲げられていますが、字の中には5羽の鳩と牛の顔が隠れていますので、探してみてくださいね。


善光寺の文字に隠れる5羽の鳩と牛

◆参拝のクライマックス本堂

宝永4(1707)年に再建された本堂。内部は外陣・内陣・内々陣と別れています。本堂内部は重厚で荘厳な雰囲気にあふれ、素晴らしいのですが、写真撮影は禁止でご紹介できないので、ぜひご自身の目でご覧になってください。


荘厳な雰囲気に包まれる本堂

外陣にはお釈迦様の弟子びんずる尊者の像があり、自分の体の悪い部分と同じところをなでると病気が治ると言われています。「びんずるさん」と呼ばれ親しまれており、お顔や体がだいぶすり減っていました。

内陣参拝と内々陣のお戒壇(かいだん)巡りには内陣券または共通券が必要。御開帳の混雑で、内陣に入るまでに1時間ほど並びました。あきらめようかと思った瞬間もありましたが、やはり内陣でご参拝できてこその善光寺参りでした。約150畳の内陣の欄干には来迎二十五菩薩。蓮台に乗った25体の黄金の菩薩が輝いていて、天国を表しているかの様です。


びんずるさんの絵馬

白雉5(654)年以降、御本尊の一光三尊弥陀如来は絶対秘仏となり、鎌倉時代にご本尊の身代わりとして「前立本尊」が造られました。御開帳の時だけ内々陣に遷され、前立本尊のお姿を拝むことができます。

善光寺参拝の魅力といえば、お戒壇巡り。暗闇の回廊を壁つたいに歩き、ご本尊の下にある「極楽の錠前」を探します。錠前に触れると、極楽往生が約束されると言われています。私も無事錠前に触れましたので、極楽往生できるかしら?

◆御開帳のハイライト回向柱(えこうばしら)

御開帳期間中、山門と本堂の間に高さ約10メートルの回向柱が建立されます。上部に巻かれた白い布は本堂で五色の糸へと変わり、さらに金糸となって前立本尊の右手中指につながります。回向柱に触れることは、前立本尊に触れるのと同じ功徳があるとされています。


回向柱から前立本尊へと糸はつながります

回向柱にも多くの人が並び、2時間待ちと言われました。この日は諦め、翌日の朝6時に再度お参りに。朝は10分程度の行列でした。


御開帳特別御朱印 透かし模様で美しい

回向柱は300年余り松代から寄進されているそうです。大名行列や姫行列とともに、松代を練り歩いた後、善光寺にやってくるのだそうですよ。

◆歴代回向柱納所

回向柱は御開帳が終わると移されます。毎回順に植え替えられ、現在安置されているもので最も古いものは昭和36(1961)年のもの。古いものほど高さが低くなり、歴史を感じます。

◆一切経を収めた経蔵

宝永9(1759)年建立。内部には6771巻におよぶ一切経(いっさいきょう)を収めた八角形の輪蔵があります。重さ5トンの輪蔵を一回転させると、中の一切経をすべて読んだのと同じ功徳が得られると言われています。


仏教経典を網羅した「一切経」を収めた輪蔵がある経蔵

◆参拝後のお楽しみ

仲見世通りには飲食店や土産物店などが軒を連ねます。郷土料理からスイーツまで。何を食べようかと食指が動きますが、長野といえば「おやき」が食べたい!ということで、「いろは堂」さんのおやきを購入。野沢菜、ねぎみそ、ぶなしめじ、野菜ミックスなど種類が豊富です。一番人気の野沢菜をいただきました。そば粉が入った小麦粉の生地が揚げ焼きになっていて香ばしく、たっぷりの野沢菜に大満足でした。

御開帳限定のお土産もたくさん売られていましたよ。七味唐辛子の老舗「根元 八幡屋磯五郎」では御開帳の特別缶を販売。ご参拝の良い記念になりそうです。

御開帳の善光寺はご参拝の方で大変混雑していました。週末に参拝したこともあり、待ち時間もかなりありましたが、御開帳ならではの特別な雰囲気を味わえました。七年に一度の御開帳。6月29日までですので、まだ間に合います。特別な御利益にあやかりに、善行寺をご参拝してみてはいかがでしょうか。

※各施設の待ち時間は善光寺公式サイトで確認ができます。

スタッフYN

善光寺公式サイト
長野県公式観光サイト