東京は桜が開花し、すっかり春になりました。草花が綺麗な季節。来期の朝ドラは「らんまん」。植物学者・牧野富太郎が主人公です。牧野は生涯で1500種類以上の植物を命名し、日本植物学の父と呼ばれています。在籍した東京大学植物学教室は、牧野が35歳から72歳の37年間小石川植物園にありました。春の陽気に誘われて、小石川植物園に週末散歩に出かけました。
◆ 小石川植物園とは
正式には「東京大学大学院理学系研究科付属植物園」といい、植物学の研究・教育を目的とする東京大学の教育実習施設ですが、「小石川植物園」の名で親しまれています。
入場料(大人)500円 年間利用料2500円
日本最古の植物園であり、1684(貞享元)年に徳川五代将軍綱吉が設けた「小石川御薬園」が前身です。1935(昭和10)年に東京大学が設立され、その付属植物園となり、一般公開されるようになりました。面積は約161,558㎡(48,880坪)。広大な敷地の中には、様々な植物が配され、温室や分類標本園、日本庭園なども設置されています。
◆ 入園してすぐ見どころのソテツ
裸子植物のソテツに精子が存在することを、1896(明治29)年に東京大学農科大学助教授の池野成一郎が発見しました。近代植物学による偉大な発見。このソテツは研究に使われた現存するソテツの分株で、鹿児島県立博物館より分譲されたとのこと。
ソテツの精子発見は近代植物学の偉大な発見
◆ 春爛漫の園内
園内にはソメイヨシノ林があり、3月19日に訪れたところ、桜は3部咲き程度。園内での飲食(飲酒は禁止)が可能なため、ピクニックシートを敷いてお花見をしている方もいました。ゆっくりとお花見を楽しみたい方には最適の穴場スポットかもしれません。
桜の下でお花見しているグループも
枝垂れ桜やコブシは満開でちょうど見ごろでした。
◆ 企画展「牧野富太郎と小石川植物園」へ
柴田記念館(理学部植物学教室教授・柴田佳太の研究室)で2023年11月26日まで開催の企画展。牧野の生涯についてのパネル解説や、植物学の研究に欠かせない植物標本、牧野が描いた植物画などが展示されています。
企画展が開催される柴田記念館
柴田記念館では植物園オリジナルグッズや牧田富田郎関連のグッズを販売しています。牧野が描いたという植物画のポストカードを購入。牧野は絵の才能があり、通常画工が描くところを、自分で植物画を描いたとのこと。緻密に描かれているだけでなく、とても美しいのです。
カレンダーと牧野氏の描いたヤマザクラのポストカード
◆ 貴重な植物を育てている温室・冷温室
熱帯・亜熱帯の植物が育てられていますが、温室では小笠原諸島の絶滅危惧植物の保護増殖活動を行っています。
スマトラ島原産のショクダイオオコンニャクもありました。世界最大級の花と言われ、数年に一度2日間開花するそうですが、肉が腐ったような強烈な悪臭を放つことで有名ですよね。2021年に神代植物公園で開花したことが話題になりました。小石川植物園でも2010年に開花したようです。燭台のような花はニュースで見たことがありますが、その後はこんな姿になるのですね~。
ショクダイオオコンニャク
◆ 薬園保存園
もともとは徳川幕府の薬園だった小石川植物園。1721(享保6)年には八代将軍吉宗が本格的に御薬園を整備し、翌年には小石川養生所を造営しています。当時ここで栽培されていた約120種の薬草植物を現在も栽培しています。江戸時代から栽培されていたと考えると、歴史を感じます!
◆ 分類標本園
研究のための植物園ということもあり、分類標本園があります。植物の分類体系を生きた植物によって理解できるように、エングラーの分類体系によって配列した「生きた植物図鑑」です。
約500種の生きた植物図鑑
◆ 精子発見のイチョウ
1896(明治29)年に平瀬作五郎が雌の木から採取した種子の中から精子を発見。それまで種子植物はすべて花粉管が伸長して造卵器に達して受精すると考えられていたため、学界に大きな反響を呼びました。池野氏のソテツ精子発見とともに、日本の植物学の発展に貢献したとのこと。歴史的な発見をしたイチョウと思うと、感慨深いですね。
種子植物にも精子があることを発見したイチョウ
◆ 旧東京医学校本館(総合研究博物館小石川分館)
1876(明治9)年に建築されたもので、もともと本郷構内にありましたが、1969(昭和44)年に小石川植物園に移築されました。国の重要文化財とのこと。現在は休館中です。
趣のある旧東京医学校本館
◆ 日本庭園
徳川五代将軍綱吉の幼児時代の住居であった白山御殿の庭園に由来しており、池泉回遊式庭園の面影が残されています。池には太鼓橋がかかり、池の周りにはきれいに刈り込まれたツツジなどが植えられ、風情のある庭園です。
綱吉公住居由来の日本庭園
◆ 小石川みやげ
小石川植物園のほど近く、趣のある和菓子屋さんを発見。創業100年の「岡埜栄泉 東京・小石川」。お店の前にはにこやかな布袋様。名物の豆大福は残念ながら売り切れでした。紅白餅と栗の入った「来福どら焼き」も美味しそうですが、小石川銘菓に登録されている可愛らしい「来福最中」をお土産に買いました。帰宅してからいただきましたが、ほどよい甘みの餡子がぎっしりと詰まっていて、美味しかったです。
小石川植物園は東京都内と思えないゆったりした空間。見どころも多く、書ききれないほど。のんびりと植物散策を楽しめました。桜の季節でしたので、お花見を楽しみましたが、様々な種類が育てられている植物園。梅林、つつじ園、イチョウ、イロハモミジ並木など四季折々の植物を楽しめます。近くに住んでいたら年間利用券を購入し、通いたいほど。
牧野富太郎は植物に囲まれ、平瀬氏や池野氏という研究仲間と切磋琢磨しながら、植物研究に没頭していたのでしょうね。朝ドラ「らんまん」の雰囲気を一足先に味わいました~。
来福最中[
スタッフ:YN
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